特別講演
日時:8月27日(水) 11:20 ~ 12:20
場所:東洋大学 8号館地下1階 8B11教室
企画:日本応用心理学会第91回大会委員会
司会:桐生 正幸 氏 (大会委員長)
題目:触感テクノロジーは心の問題を解決できるか
(東京大学新領域創成科学研究科複雑理工学専攻・教授))
篠田先生のご業績などについて,下記をご参照ください。
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/gsfs/faculty/hiroyuki_shinoda/
https://hapislab.org/
これまでのIT技術において,触覚は再現が難しいもの,というのが前提であった。そのため,人間への情報伝達の経路としては視聴覚が専ら使われ,触覚の活用は限定的であった。しかしその前提は近年変わりつつある。面倒な装置を身につけなくても,非接触のまま多様な触感を再現できる技術が現実となり,モノに直に手で触れたときの圧覚や,他者に触れられたときの心地よい感覚まで,一定の万能性をもって再現できるようになってきている。このような新たな感覚生成技術は,人間の生活を今後どのように変えていくであろうか。触覚の重要な特徴の一つは,メンタルに対して視聴覚とは異なる性格のアクセス経路を有していることである。触覚は,ホルモン分泌などを通して精神の安定や身体の健康と物理的にも関係しており,幼児期においては自己肯定感や倫理感の醸成など,人格基盤の形成のために不可欠な感覚であると考えられている。そのような触覚を,日々の人間の行為の中に適切に組み込むことができれば,人間のこころを良好な状態に保ち,その活動を強力に支援できる可能性がある。本講演では,触覚を活用するIT技術の新しい姿を提案しながら,想定される負の側面やその対処法についても議論する。